all streets shibuya
A local guide made by walking
渋谷発のクラフトドリンクと
街で磨かれる美味
Vol.16 薮内椛那
(「KBT -Kombucha Brewery Tokyo-」代表)
2024.06.09
クラフトビール、クラフトジン、クラフトチョコレート……小規模ながらこだわりあふれる、個性的なドリンクやフードを目にすることが増えてきました。では、「クラフトコンブチャ」はご存知ですか? そもそもコンブチャって?
今回のゲストである薮内椛那さんが代表を務めるのが、クラフトコンブチャブランド「KBT」です。アメリカでおなじみの発酵飲料であるコンブチャですが、日本では認知度がまだまだ。しかし薮内さんは食事に合うドリンクとして可能性を感じ、渋谷区の一軒家を工房に、職人のように手作りしています。渋谷発のクラフトドリンクについて、お気に入りの場所をめぐりながら教えてもらいました。
コンブチャが飲める
ブルーボトルコーヒー
「ここはすっごく重宝しています。落ち着きがあって、打ち合わせ場所にぴったり。伊勢角屋麦酒と共同開発したペールエールが飲めるのもうれしいです。私、酒飲みなので」
2023年12月にオープンしたばかりの「ブルーボトルコーヒー 代官山カフェ」で限定の「ブランチプレート サーモン」を頬張りつつ、薮内椛那さんは朗らかに笑いました。メニューには「KBT」のドリンクも2種類が並びます。
「渋谷発のドリンクならぜひ取り扱いたいと声をかけていただきました。ブルーボトルは各地に展開しつつ、ローカルも大切にしているのがすばらしいですよね。2年前にはコラボしてコンブチャを作らせてもらったこともありました」
お茶を発酵させて作る
次世代の健康飲料
「ブルーボトルのようなお店から、コンブチャを知ってもらえたらうれしいですね。ポップアップをすると『これは昆布のお茶なの?』と聞かれることもまだありますから」
日本での浸透具合と裏腹に、アメリカでは健康飲料として定着しているコンブチャは、お茶を発酵させて作る植物性由来の発酵飲料です。茶葉と糖類、水、ゼラチン質の株菌スコビーが原材料。アミノ酸やビタミン類、ポリフェノールなどとともに酢酸菌や酵母など多くの菌が含まれ、「次世代の健康飲料」とも呼ばれています。
「編集者・ライターの仕事で定期的にハワイへ通っていたので、現地でよくコンブチャを飲んでいました。微炭酸で爽やかな酸味が特徴。それが2020年にコロナで行けなくなり、恋しくなって自分で手作りしてみたら好評で、翌年にはブランドの設立に至りました。単に健康的なだけでなく、食事に合うんですよ。まるで私が大好きなナチュラルワインみたい。そこで瓶詰めにし、ナチュラルワインのようなアプローチを目指しました。食のビジネスは素人でしたが、仕事の経験を活かしてブランディングできたように思います」
製造の日々を癒す
神社と銭湯
立ち上げから2年半、流通量が拡大してもなお、薮内さんは自ら醸造を続けています。原材料の計量から、瓶への充填や手動のキャップ閉栓、運送業者への出荷作業まで。渋谷区内の一軒家で行なわれる作業は、クラフツマンシップそのものです。
「ドリンクメーカーは本当に大変。だから、明治通りのほうに出たときには、いつも『金王八幡宮』でお参りするようにしています。工房の氏神様が祀られているんです。渋谷区は坂が多いので移動はもっぱら電動自転車ですが、身体を動かすことが好きなので、明治通りそばの『改良湯』もよく行きます。昨日も行ってきたばかり。ピラティスをして、プールで泳いで、銭湯に行くのがルーティンですかね」
ナチュラルワインと
中華、居酒屋、バー
「そして1日の終わりにはナチュラルワインのあるお店によく行きます。さっぱりして、飲みやすくて、食事に合わせやすい。中華にだって合いますよ。『coyacoya』はナチュラルワインを出す中華バルの先駆けで、予約ができないので、開店時刻の17時にはいつも長蛇の列ができています」
ナチュラルワインを出す飲食店で「KBT」のドリンクがメニューに加わることも増えていると薮内さんは続けます。
「代官山は夜までやっているお店が少ないので、『オ山ノ活惚レ』は貴重な存在。料理はどれもカジュアルなのに、手が込んでいて本当においしいんですよ。『KBT』のドリンクを取り扱ってもらっています。ナチュラルワインの品揃えが豊富な『Baro』も常連にしている店。渋谷区に住んでいたからクラフトコンブチャを閃いたというわけではありませんが、日々こうしたお店で食べたり、飲んだりしていたから、知らず知らずのうちに刺激を受けていたのは間違いないでしょうね。もっとたくさんの人に『KBT』を知ってもらって、クラフトコンブチャを毎朝一杯飲むという習慣が広まってほしいなと思っています」