all streets shibuya
A local guide made by walking
渋谷にいながら世界を感じ、
アツいサウナでととのう
Vol.09 岩田リョウコ
(作家)
2023.01.16
サウナは好きですか? むさ苦しいおじさんの趣味と思われていたのも今は昔。サウナ・水風呂・休憩後に恍惚を感じる「ととのう」という言葉が浸透するとともに、数年前から叫ばれるようになったサウナブームは、いままさに最高温に上昇しています。愛好家たちからサウナ不毛地帯と嘆かれていた渋谷でも2022年に話題施設のリニューアルやニューオープンが相次ぎ、いよいよアツいサウナタウンに変貌中。その魅力を教えてもらうべく、渋谷区在住の作家である岩田リョウコさんと街を歩きました。食べて、飲んで、蒸されて、また蒸されて。冬でもアツく楽しめる街、それが渋谷なのです。
暮らしてわかった
渋谷の差異
「名古屋で育ったので、渋谷は都会すぎて暮らしにくいだろうなと勝手に思っていました。それがいざ住んでみたら、同じ渋谷区内でも地域によって雰囲気が全然違って、その差異がおもしろいなと感じています」
そう話す岩田リョウコさんは、渋谷を拠点にするようになって6年目。魅力的なスポットを歩いてめぐるのが、自宅にこもりがちな執筆作業の息抜きになっているそう。
「私は落ち着きのある神泉のあたりがお気に入りです。反対に、ガヤガヤした道玄坂はちょっと苦手。さっさと通り抜けようとだれよりも早く道玄坂を歩いている人がいたら、きっと私かもしれません(笑)」
食べて、飲んで、
渋谷で世界を感じる
「飲食店だと、世界各地の朝食が食べられる『WORLD BREAKFAST ALLDAY 外苑前』が好きで毎月通っています。あと『代々木公園』もお気に入り。都心にあれだけ開けた場所があるのはすごいことですよね。コーヒーさえあれば何周でも歩けます(笑)」
岩田さんの作家活動はコーヒーの本が始まりでした。さらにコーヒーの興味からフィンランドを訪れるようになると、2冊目の本はフィンランドの旅行ガイド。そんな彼女にとって、北欧文化を発信するカルチャースペース「Hyvää Matkaa!」はぴったりな場所でした。
「ここは北欧専門の旅行会社による運営なので、世界観もメニューもフィンランドそのものなんです。北欧で主流の浅煎りコーヒーに、フィンランド人スタッフの家庭の味を再現したカルダモンたっぷりのシナモンロール。サウナ小屋風の半個室もあるので、渋谷にいながら現地の気分にどっぷり浸れるはず。遠出ができないような日々が続いていましたから、こういう空間を通して世界を感じられることに、救われるような思いがします」
生まれ変わった
デザイナーズ銭湯サウナ
そしてコーヒー目当てでフィンランドに通ううち、本場で体験してのめり込んだのがサウナでした。
「サウナなんて私に絶対無理と思っていました。それが友だちに連れていかれ、体の芯まで温まってから水風呂に入ったら、『ととのう』ことができたんです。それからひどい時期には毎日サウナに通っていたほど(笑)。渋谷区なら、銭湯建築家の今井健太郎さんによってリニューアルされた『改良湯』がおすすめ。おしゃれで、清潔で、愛好家がヌシと呼ぶような怖い常連客も少ないので、初心者も入りやすいと思います。サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させるフィンランド式のロウリュと外気浴を、男湯に続けて女湯にも導入してほしいですが!(笑)」
渋谷でいま
いちばんアツい場所
「じつは渋谷って、日本におけるフィンランド式サウナ発祥の街。でも、それは半世紀も昔のことで、愛好家の間では長らく、渋谷はサウナがない街として有名でした。それを一変させたのが、2022年12月オープンの『渋谷SAUNAS』。あの『マンガ サ道』原作者のタナカカツキ先生が初めて総合プロデュースをした、とんでもないサウナです。都心のど真ん中で『ととのう』なんて夢みたいで、私を含め渋谷周辺の女性たちの救世主になってくれます(笑)」
サウナで蒸された後はなおさら、おいしいビールが恋しくなるもの。「Mikkeller Kiosk/Bar」では、国内外のクラフトビールをカジュアルに飲むことができます。
「ミッケラージャパン代表のハミルトンが手がけるお店は遊び心がすごい。ビールの流通の99%がラガーという日本で、それ以外のさまざまな種類を飲ませてくれますし、カーテンでしきられた立ち飲み席が奥にあるのも、楽しい出会いがありそうじゃないですか。サウナは睡眠の質を改善してくれるので、それにおいしいクラフトビールを組み合わせたら、もう快眠間違いなしでしょうね」