アンテルーム開業10周年記念企画「ANTEROOM TRANSMISSION vol.1 - 変容する社会の肖像」(6/30まで会期延長)
新型コロナウィルスによりもたらされた社会の減速と活動の萎縮、そして、インターフェイスを通して他者や世界との繋がりが加速したこの一年。本プロジェクトは、若い世代の発表の機会をつくるとともに、彼らの作品を同時代へのメッセージとして伝えることを目的としています。今後も継続を予定しており、第一弾となる本展では、国内外で活躍するアーティストやキュレーター4名が、現役大学生及び卒業後3年以内の若手作家の中から選出した7名を紹介します。
情報を身体的に捉え直す事でデジタルとアナログのずれに着目する大澤、コロナにより変化する身体と環境の相互関係を可視化する小田、人類の歴史を俯瞰し文学的に示唆する佐藤、日常を被写体にしたスナップから永遠性への憧れを感じさせる椿野、インターフェイスを通し知覚した世界を自らの手で変換する津村、プリミティブな素材を用い自身とその外側にある社会を繋ぐREMA、身の回りにある素材をトレースする事で新たな風景を作る六根。
世界規模の事象の影響で変化する日常を受容し、あるいは抵抗する彼らの姿勢は、変容する社会の肖像とも言えるかもしれません。
荒々しくも瑞々しい彼らの表現を是非ご高覧下さいませ。
「ANTEROOM Transmission vol.1 - 変容する社会の肖像」
会期:2021年4月28日(水)~5月30日(日)※6月30日(水)まで会期延長致します。
休館日:6月7日(月)6月16日(水)
時間:10時~20時
会場:ホテル アンテルーム 京都 l GALLERY 9.5
住所:京都市南区東九条明田町7番
TEL:075-681-5656 (担当:須山/江口)
出品作家:大澤一太、小田蒼太、佐藤瞭太郎、椿野萌、津村侑希、REMA、六根由里香
推薦者:伊藤まゆみ(キュレーター)、髙橋耕平(アーティスト)、ヤノベケンジ(現代美術家)、やんツー(アーティスト)
主催:ホテル アンテルーム 京都
企画:上田聖子(UDS)
展示作家紹介
大澤 一太 OSAWA ITSUHIRO
1999 年 埼玉県熊谷市生まれ
2018 年 京都芸術大学(旧京都造形芸術大学)美術工芸学科 写真・映像コース入学
2021 年 現在も在学中
【ステートメント】
インターネット、デジタルデバイス、身体、これらの融合性の意識化と、この3つの往来によって作られるイマジナリーとリアルの擦り合わせからなる自己意識の分裂、外界とのズレを身体的な繋がりとイメージでの繋がりを同等に扱いながら作品を制作する。
【推薦文】
大澤は途切れることなく接しているデジタルデバイス、インターネット、身体を自明のものとはせず、批評的に向きあう姿勢を見せる。それは環境への批判や擁護を声高に言うものではない。自明とされた環境に身を浸す快楽と利便性を知りながら、そこから抜け落ちるモノや都合の良さ、約束事を解析する姿勢である。大澤は完成の途中にあるような仮設的状態を作品として提示する。それは異物同士の接合や同化過程における摩擦の提示であり、物事を成立・調和させるためのルールの再編成の提示である。
髙橋耕平(アーティスト)
1998年生まれ
2021 京都精華大学ビジュアルデザイン学科卒
2020 個人表現研究成果展「The - Year - End」(CEKAI KYOTO HAUS、京都) 出展
2021 抵抗とレゾナンス(BnA Alter Museum、京都) 出展
2021 京都精華大学展2021(京都精華大学、京都) 出展
【ステートメント】
この2年に亘り透明素材に魅せられ作品を作り続けてきた。透明素材はレイヤー構造によりセル画のように見せたり、立体的に表現したりできる。そして、描画によってうまれた可視不可視が、鑑賞者にあらゆる視点から作品を認識させる。今回の出展作では、透明な層を重ねることで霞や、ウイルスに汚染された人間の肺と引き換えに、コロナ禍によって見晴らせるようになったヒマラヤ山脈の風景などをモチーフに、コロナウイルスと環境汚染問題の明瞭な相関関係と表現している。
【推薦文】
大学4年に進級し、卒制に取り掛かろうというタイミングで、新型コロナウィルスの蔓延によって変わっていくこの世界を目の当たりにし、それまで自身が表現のメディアとして扱ってきた透明な膜が、このコロナ禍を象徴するようなマテリアルであると気づいた小田は、誰よりも早く、そして多くの時間をかけてこの問題に一年かけて取り組んできた。今回展示する作品はその誠実さと胆力が結晶化されたような作品である。
やんツー(アーティスト)
1999年北海道生まれ。
2021年筑波大学芸術専門学群構成専攻総合造形領域卒業。
現在、 東京藝術大学大学院映像研究科修士課程メディア映像専攻在籍中。
メディアと人間の関係をテーマとし、新たな身体や認識のあり方を探る実践を行っている。
【ステートメント】
わたしたちは何かを介することで、ようやく誰かと繋がることができる。だが、そのための道具は、いつでもわたしたちをうまく代弁してくれるわけではない。道具を使ううちに、わたしたちの身体や認識は変容させられてしまう。だからわたしは道具の力を、あるいは暴力を確認したい。わたしたちがどう変わっていくのかを考えるために。
【推薦文】
人類に利便性をもたらしてくれる「道具」と、その裏に必ず隠されている「暴力」について、佐藤はそれらの現在的な諸問題を軸に、過去を参照しながら鋭く切り込み、独特なシニカルさと批評性で作品にして暴いてみせる。しかしそれは安直に警鐘を鳴らすということではなく、変化を受け入れた上での怖いもの見たさだったり、純粋な好奇心に見える。そんな彼のニューメディアに向き合う態度は、古い世代のそれとは異質で、新しい世代の出現を予感させるし、これからを期待せずにはいられない。
やんツー(アーティスト)
1996年生まれ
2019年 京都精華大学ビジュアルデザイン学科デジタルクリエイションコース卒業 福井県鯖江市 在住
2017年 「unmark 2017」(AMS写真館)
2018年 「Nostalgic hangout」(Alternative Space yuge)
2018年 「PEEPING MANDARA」(妙満寺)
2019年 「京都精華大学展 卒業・終了発表展 2019」(京都精華大学)
2021年 「gift」(gallery35)
【ステートメント】
フィルム写真を主な表現方法とする。自分自身の生活と死の狭間にある記憶と向き合い、この世から消失していくものを新しい形で遺す作品を制作している。今回の「silent prayer」では遺影と祈りをテーマに、亡くなっていったものたちと触れ合うためのツールとして写真作品を制作。
【推薦文】
叙情性溢れる感性で、現代を生きる若者やそれをとりまく身の回りの環境、そして自分自身をまなざしフィルム写真で表現する椿野。写真にそえられる言葉も瑞々しく、一貫して等身大の今を切り取っている。そして彼女は2年前の卒業制作で、思い出を弔うためのツール、つまり「記憶の遺影」としての写真作品制作を試みた。捲る行為によってフィジカルにも他者の過去に触れる体験を通して、全ての写真は本来的に遺影なのかもしれないと気付かされる。
やんツー (アーティスト)
1998年生まれ
2017年 銅駝美術高校を卒業後、京都精華大学に進学
2021年 京都精華大学を卒業し、東京藝術大学大学院へ進学
2018年 RECORD JACKET展 瑞泉寺クロッキー部企画
2019年 京都精華大学油画・テキスタイル五人展 Garelly Ann
2019年 津村侑希個展「埃を被った作業台」 京都精華大学ドラフトギャラリー
2020年 洋画三回生進級制作展
2021年 精華大学展2021 7-23ギャラリー
2021年 「PICKS!展」京都精華大学サテライトスペースDemachi
【ステートメント】
自身が訪れたことのない異国の地への憧憬を主題とし、Google Earthのストリートビュ ーや航空写真、地図などを、ヴァーチャルツーリズム的な視点で見ることから着想を得て作品を制作している。作品中に描かれる場所は主に、コーカサス地域の景色の一部である。 洞窟絵画のように、自分の認識・知覚の「内側」で、どこかここではない場所、つまり 「外側」を描くという行為は、自己と外部を繋ぐ「想像力」となる。
【推薦文】
津村は、異国の地への憧憬をテーマにGoogle Earthのストリートビューなどのイメージから着想を得て、絵画を中心に制作している。コロナ禍で自宅から出られない時に経験した閉塞感や開放された窓の「内と外」の関係から発展し、様々な隔たりを持った社会との関係性について考えた津村。中央アジアやコーカサス等の美しい景色や自然に着目するだけでなく、その地をダークツーリズムの観点でも捉え、秩序とカオスの間で混乱した世界を作品をとおして見つめ直す。
伊藤まゆみ(京都精華大学 展示コミュニケーションセンター特任講師)
1996年 愛知県生まれ
2021年 京都芸術大学修士課程 美術工芸領域映像メディア分野修了
2021.02-KUA Annual 2021「irregular reports いびつな報告群と希望の兆し」(東京都美術館)
2021.03-「ARTISTSʼ FAIR KYOTO」(京都新聞社印刷工場跡地)
2021.03-「MUTANT(S) on POST PHOTOGRAPHY」(curation :後藤繁雄/多和田有希)
2021.04-「DAWN-EXPOSITION 2021.04-」(銀座SIX 蔦屋書店)
【ステートメント】
初期は自身の化粧など外面的特徴からセルフポートレートを使用した作品群を制作。修士過程から、それまで扱われていたセルフポートレートは女性性と影ーーそしてそれらは予感と夢想が原動力となってーー抽象化され線と焼き付けるという行為によって表現されるようになる。様々なマテリアルへと施されてゆくイメージは、まるで元からそこにあった印のように現れ、見る者をnew-primitiveの世界へと誘う。
【推薦文】
デビュー以来、巨大化した自身のポートレート・ペインティングで一躍脚光を浴びたREMA。近年は拡張する表層表現を反転化させ自己内面の物語を古木や自然石、木の葉にドローイングとして彫り込む文学的探求心あふれる作品群が目覚ましい。それは人類が共有する深い記憶に触れる体験に鑑賞者をいざなうのである。
ヤノベケンジ(現代美術家)
1995年 大阪府生まれ
2018年 京都精華大学芸術学部メディア造形学科版画コース卒業
2021年 京都精華大学大学院芸術研究科博士前期課程版画領域修了
2017年「Stone Letter Project -石からの手紙 vo.1」宝塚大学 gallery TRI-ANGLE(兵庫)
2018年「Exhibition 空記」総本山妙満寺(京都)
2019年「the high street」hatoba café / gallery(京都)
「work in progress 2019 切り取るための風景」KYOTO ART HOSTEL Kumagusuku(京都)
2020年「此処がユートピア」POL(大阪)
2021年「Kyoto Art for Tomorrow 2021 京都府新鋭選抜展」京都文化博物館(京都)
「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2021」京都文化博物館別館、京都新聞ビル地下1階(京都)
「眼閃、もしくはその因子 in Tokyo」Basement GINZA(東京)
<提供>
2020年 パオロ・ダンジェロ(著)鯖江秀樹(訳)水声社『風景の哲学 芸術・環境・共同体』表紙作品
【ステートメント】
私は日常風景やネット上に溶け込む不可思議にオブジェ化されたものに惹かれる。またものを部分的に抽出した場合の情報の欠落に興味がある。一言では言い表せないものの具体性における知覚の輪郭を探る試みとして、リトグラフやドローイングによる表現、トレース(なぞる)工程を用いた制作を行う。
【推薦文】
六根は、日常生活で目に留まった不思議な形状にオブジェ化されたものの形やそれが異なる形に変容し、部分的に抽出された時に起こる情報の欠落に関心を抱き、認識できるものを「具象」、認識できないものを「非具象」と捉え、リトグラフやドローイングを中心に制作している。本展では、オブジェ化されたもののメタファーを検証する場として、六根が考える具象と非具象の境界の具現化を試みる。
伊藤まゆみ(京都精華大学 展示コミュニケーションセンター特任講師)
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